とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


高田はしばらくして「あ!」と声を上げた。


「思い出したよ!

さっきの人、この前倒産した大手企業の令嬢だよ!」

「あの女が令嬢?…なんかの間違いじゃないか?」

「俺さ、就職組だから企業チェックしてんだよ。

何日か前に見たばっかだから間違えない。」


恋人には振られ…親は倒産か…

「ツイてないな…」

「気の毒だな…そりゃ慰めて欲しいよな。

ウリ坊行ってやったら?」

「なんで俺が…自分の事でいっぱいいっぱいだよ。」

「忍さんには黙っててやるから…」

「そーゆー問題じゃないの!」


俺は高田を軽く睨んだ。

だがあの令嬢がちょっと気になった。

負のオーラを纏ってると言うか、不幸を呼び寄せてるような気がした。


「なんか取り憑かれてるような感じもするな…」


高田の何気ない一言に俺も頷いた。


ふと時間を見ると10時を回ったところだった。


「高田もういいぞ?タダ働きなんだから無理すんなよ」

「そうだな。…ってみんなもう帰ったのか…」

「あぁ、お前が最後だな。」


丁度高田がカウンターを出た時、見慣れた顔が店に来た。


「あっれ~?高田じゃん!」

「陸!お前も常連なのかぁ」

「陸はクラブと女が好きだからな…」


俺がそう言うと両手の人差し指で俺を指し「せーかい!」と笑った。




< 292 / 405 >

この作品をシェア

pagetop