とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
高田はしばらくして「あ!」と声を上げた。
「思い出したよ!
さっきの人、この前倒産した大手企業の令嬢だよ!」
「あの女が令嬢?…なんかの間違いじゃないか?」
「俺さ、就職組だから企業チェックしてんだよ。
何日か前に見たばっかだから間違えない。」
恋人には振られ…親は倒産か…
「ツイてないな…」
「気の毒だな…そりゃ慰めて欲しいよな。
ウリ坊行ってやったら?」
「なんで俺が…自分の事でいっぱいいっぱいだよ。」
「忍さんには黙っててやるから…」
「そーゆー問題じゃないの!」
俺は高田を軽く睨んだ。
だがあの令嬢がちょっと気になった。
負のオーラを纏ってると言うか、不幸を呼び寄せてるような気がした。
「なんか取り憑かれてるような感じもするな…」
高田の何気ない一言に俺も頷いた。
ふと時間を見ると10時を回ったところだった。
「高田もういいぞ?タダ働きなんだから無理すんなよ」
「そうだな。…ってみんなもう帰ったのか…」
「あぁ、お前が最後だな。」
丁度高田がカウンターを出た時、見慣れた顔が店に来た。
「あっれ~?高田じゃん!」
「陸!お前も常連なのかぁ」
「陸はクラブと女が好きだからな…」
俺がそう言うと両手の人差し指で俺を指し「せーかい!」と笑った。