とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



俺は剣道部に戻ると虎太郎に話した。


「奇妙だよな…泥棒か?」

「でも昨日も遅くまで残ってるヤツ結構いただろ?」


そんな話しながら防具を担いで歩いていると、どこからか微かに笑い声が聞こえた。


…子供の声…?


「虎太郎…聞こえたか?」

「なに?」


…気のせいか?



ーーくすくす…



違う…気のせいじゃない!


俺は辺りを見回した。

微かに風がざわめく。



ーーくすくすくすくす…


「!…聞こえた。」



と…俺と虎太郎の間を風が吹き抜けた。


「!?」


中庭に設置されたテントがぐらつく。

俺はとっさに倒れそうなテントを支えた。


風はそのまま生きているように旋回すると校庭の方角へ移動した。


「なんだ、あれは!!」

「ただの突風じゃないのは確かだよな…」


俺達は防具をその場に放り出し、風を追いかけた。



くすくすくすくす…



今度はハッキリ聞こえた。

子供…男の子?


だが姿が見えない。

目を閉じて耳を済ませる。


「虎太郎!千里眼!」

「やってる!…全く見えない!」


真上から悲鳴が聞こえた。

開け放たれ窓から机が降って来るのが見えた。


「おいおい…マジかよ!」


俺達の側にガン!ガン!と落ちた机。


「くっそ!狙ってやがる!」


だが殺気は感じない。

からかうように挑発しただけのような…


なんなんだ?…どこにいる!?


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