とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
風が学校の敷地をぐるりと一周するように回ると、何事も無かったように消えた。
「右京…」
「…実体がなかったみたいだった。」
「あぁ…」
とりあえず騒ぎも収まったので中庭に戻る事にした。
「本体はどっかに居るんじゃないか?」
「けど意図がわからない。」
「こりゃ七不思議じゃ済まされないぜ?」
虎太郎はしばらく考え、口を開いた。
「なぁ右京。そもそも“七不思議”ってさ…真実を隠すためって話じゃないか?」
「…どれかが当たりって事か?」
「ん。俺はやっぱりどこかで何かが召還されてるんだと思う。」
って事は“合わせ鏡”による悪魔召還か…
「これだけ暴れてたらあちこち被害が出るからすぐわかりそうだけどな…」
「実体のある所は被害が出てないだろうな…」
“合わせ鏡”なんてものはどこだって作り出せる。
特定が難しいが恐らく被害がない場所は…
「…あるじゃねーか…人が来なくて召還にうってつけな所が…」
虎太郎は俺の言葉に首を傾げた。
俺は部室棟の北側を指差した。
そこにあるのは老朽化した3階建ての建物…
「なるほど…“旧校舎”か。」
「今行くには目立ち過ぎる…暗くなるのを待とう。」
虎太郎が俺の提案に頷くのを確認し、とりあえず教室へ戻った。