とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
校舎に入りると不可思議な風の影響であちこち被害が出ていた。
その範囲の広さに驚いたが、物が倒れたり飛んだりしただけで致命的なものはなさそうだった。
俺のクラスもすぐに収拾つく程度でホッとした。
夕方近くには準備も終わり、クラスメートはパラパラと帰りだした。
学校には実行委員数名を残してほとんどの生徒が帰ったのを確認すると、俺と虎太郎は旧校舎に向かった。
老朽化したその建物は昇降口には鍵がかかっており、やはり素直には侵入出来なかった。
「表からは入れないか…」
「裏からなら入れるかな…」
旧校舎をぐるりと一周する形で裏に回ると、一階の窓ガラスが割れてそこから容易に入る事が出来た。
俺は窓枠を軽く飛び越え廊下に滑り込んだ。
ーくすくす…
愉快そうに笑う声。
日が西に傾き薄暗くなった廊下を歩く。
突き当たりの部屋から一筋の灯りが洩れてるのが遠目からもわかった。
ドアの前で立ち止まりプレートを見た。
取れかかったそれには“図書室”と書かれていた。
…気配で誰かいるのがわかる。
俺はゆっくりと扉を押し開いた。