とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
『やっと来た!』
そう言ってクスクスと笑う“それ”に目を向けた。
艶のある短い白髪の少年…
一見人間にも見えるが徹底的に違っているのは、顔の両脇に耳のような羽根が生えている所だろう。
時々その羽根をパタパタと動かしながら、少年は机の上で胡座をかきながらこっちを見つめていた。
「…シャス?」
虎太郎が少年を見てそう言った。
“シャス”だと?
その愛称は聞き覚えがあった。
確か正しくは“シャックス”…
この悪魔は決して魔法陣にから出しては行けないと昔誰かが言っていたな…
この部屋には魔法陣はあるものの、シャックスとはかなり離れていた。
「虎太郎…あいつは魔法陣にいないとヤバいんじゃないのか?」
「まぁ…ヤバいな…
魔法陣の外だと厄介だ。」
歯切れの悪い虎太郎の様子に首を傾げた。
俺を見て虎太郎は「腐れ縁でね」と話出した。
「シャスは昔から騒ぎばかり起こして、そのたびに俺達が後始末に駆り出されてたんだ。」
「それは人間界でか?」
「あぁ。派手なイタズラをね…」
そう言われてもシャックスは全く聞いていないのか、楽しそうに笑ってこっちを見ていた。
「悪びれた様子もないが…」
「右京。子供だからって甘く見るなよ?
…全て計算の内だ。」
虎太郎はそう言ったが俺には分からなかった。