とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「子供のイタズラだろ?」
「右京…甘い。
昔シャスのイタズラで内乱に発展した国もあるんだぜ?」
「…マジか…」
引きつる俺に虎太郎は真面目な顔で頷いた。
そういえば潤も可愛い顔してても垣間見える裏の顔は悪魔だもんな…
顎に手を当てて考え込むと俺は「よし」と声を発した。
「虎太郎の知り合いって事だし、コイツはお前に任すわ…」
「えぇ!?」
「魔界に帰すなり、世話するなり好きにしろ。」
俺の言葉にシャックスは満面の笑みで飛び跳ねて虎太郎に抱きついた。
「やったぁ!ハニエルと一緒に居れるんだね!?」
「待て。誰もそんな事言ってない!」
虎太郎はベリベリとシャックスを引き剥がして片眉を釣り上げた。
「とりあえず魔法陣に戻れ。じゃないと今すぐ魔界に送還する!」
「ボクまだ魔界には帰らないよ?」
「じゃあ魔法陣に入れ!」
まるで犬に“ハウス!”とでも言う様にビシッと魔法陣を指差す虎太郎を見て、シャックスはあからさまに不機嫌な顔をした。
しばらく睨み合いをしていたが、シャックスは顔の脇にある羽根を力なくしょげてトボトボ魔法陣に歩いて行った。
俺はその様子を見てシャックスに同情仕掛けた時、少年は突然振り返りニヤリと笑った。
「な~んてね!魔法陣なんてクソ食らえだ!」
シャックスは舌を出して“あかんべ”をしてフワリと飛んで図書室を飛び出した。