とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
午後の見回りで教員がうちのクラスを訪れた時も、相変わらず騒がしい様子に血相を変えて飛び込んで来た。
「お前ら撤去しろって行ったろ!?」
「リンクは撤去したぜ?」
「じゃあこの騒ぎは何だ!」
「アームレスリングだよ。
これならいいだろ?
あ、センセーも挑戦して!」
陸がそう言うとズイズイと俺の前に押し出されてきた。
「男は片手、女なら両手使ってもいいぜ?」
ニヤリと笑う俺に教員は観念したように肘を机についた。
「腕っ節には自信あるんだ。
黒崎だろうと負けない。」
そう言っていた教員だったが、結局俺に負けて肩を落として教室を出て行ったのだった。
「私も参加していい!?」
隣のクラスの女子がハイテンションで名乗りを上げ歓声が上がった。
肘を着いて構える俺を見て女子生徒はちょっと顔を赤らめた。
「なに?」
「いや…黒崎くんに見られると緊張する…」
「ふーん…おい、虎太郎。」
「おっけ~」
虎太郎は俺にはちまきで目隠しをした。
「これで大丈夫?」
「うん、私両手でもいいの?」
「何でも。かかってきなさい。」
目隠しが何故か好評でそのまま何人か挑戦者と対戦させられた。
「ウリ坊、次ラスト~」
構える俺の手を握る手に俺はドキッとした。
「…ちょっと待て…」
「待ったナシ!」
「お前…まさか…」
明らかに細い手の感触に覚えがあった。
この手は間違いなく最愛の…
「忍だろ!?」
挑戦者は無言で俺の手を倒しにかかって来た。
俺がわざと力を緩めて負けると爆笑と歓声が響き渡った。
「なんで分かったの~!?」
目隠しを外すとやはりそこにいたのは忍だった。