とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「ウリ坊すげー!
手握っただけで気付くとは…」
「とーぜん!俺に忍が分からない訳ないだろ?」
自信たっぷりにそう答えると忍は恥ずかしそうに笑った。
そんな忍の手を握ったまま引き寄せると彼女の艶やかな髪を撫でた。
「さて…姫ご要望は?」
「ふふ…じゃあ一緒に模擬店廻ってもらおうかな。」
「…それだけ?」
「他に何があるのよ…」
「いや、勝っても一緒に廻るつもりだったし…」
なんとなく物足りない要求に短く息を吐いて肩を落とした。
「セリ達も来てるんだよ~?」
忍が指差した方を見るとヒラヒラと振られる手だけが見えた。
「腹減った!みんなで何か食いに行くか?」
「うん!」
「虎太郎も行くだろ?」
「行きたいんだけど…“弟”が…」
「あぁ…あの“弟”か…」
「虎太郎君に弟!?…初耳…」
「正確には“弟みたいなヤツ”だけどね。」
「かなりのクソガキだ。」
忍は会いたがっていたが、俺が断固拒否したせいで虎太郎だけ別行動になった。
陸が人数を合わせようと言って側にいた橋本を拉致して模擬店に向かった。
「俺バスケ部のブースにも行かないとなんだけど…」
「橋本ってバスケ部だったんだ!」
「一応ポイントガードなんだけど…」
「今年も3ON3か?」
「そ。来年度の新入生の勧誘も兼ねてる。」
「3ON3楽しそう!」
やりたそうな忍を見て高校時代バスケ部だったのを思い出した。