とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
なかなか続きを言ってくれない忍を覗き込んでみたが、俯いてしまった。
俺は忍の髪をもてあそびながら溜め息をついた。
「まぁいいや。
誰が何を言っても忍は譲らないけどね。」
ごく自然にいじっていた忍の髪に口付けるとにっこり笑った。
「だから場所をわきまえなさいって言ってんでしょーが!!」
今まで我慢していたらしいクミが爆発しだし、ギャラリーが大騒ぎになっていたのに気付いた。
「…忍さんみたいなタイプを落とすなら、あのくらい自然に出来ないとダメなのかな…」
「いや…あれは右京だからだろ…
寛二があんなだったらドン引きだろ?」
「なんで俺!?
…あ、クミ落ち着いて!」
うるさい外野を横目に忍の手を引いて抜けだそうとした時、目の前を猛スピードで横切る子供を見つけて動きを止めた。
「まちやがれ、シャス!」
その後方から子供を追いかける虎太郎が見えた。
「…」
「…あれって虎太郎君だよね?」
「…人違いだろ…」
虎太郎は俺を見つけると懇願するような眼差しを向けた。
「右京!シャスを捕まえてくれ!!」
「…」
「さっき言ってた虎太郎君の“弟”?」
「クソガキだよ…」
「間違いねぇ…筋金入りだ…」
「…もしかして…ただの子供じゃないの?」
意外と勘のいい忍に頷いてげんなりした。