とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
支度を済ませてバイクに跨ったところでタカユキが帰る後ろ姿を見つけた。
「タカ!」
「右京先生!すげー…バイクかっこいい…」
「家どこだ?送ってやるよ。」
「やった!駅でいいよ。」
発進しようとした時「右京!」と師範に呼び止められた。
「あ?なにぃ?」
「タカユキも一緒だったのか。
…右京にそそのかされて不良になるんじゃないぞ?」
「じじぃ…それだけか?」
「帰ったら茂さんの家まで迎え来てくれ。」
「目と鼻の先じゃねーか…自分で帰って来いよ…」
「今日は飲み明かすんじゃ!」
「いつもじゃね?まぁいいや…わかった。」
走り出してから後ろからタカユキが「不良なの?」と真剣な様子で聞いて来た。
「かもな。自覚はねぇーけど。」
「なにそれ!自覚のない不良なんて聞いた事ないけど!」
タカユキはゲラゲラ笑った。
「だからいつもアチコチ怪我してんのか!」
それは師範に…と言おうとしてやめた。
タカユキが崇拝する師範のイメージを壊してもかわいそうだし…
「到着!」
「ありがとう!右京先生!」
そこに「黒崎?」と声をかけられた。
「ゴウじゃねーか。昼間に会うなんて珍しいな…」
「その言葉そっくり返すわ。」
タカユキをゴウは興味深い目でジロジロと見た。
「かわいい坊主連れてるじゃないか。」
「うちの門下生だよ。
…やめろ。怯えてる。」
あまりにもしつこく見つめられて固まるタカユキが可哀想になって来た。