とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
普通の人間なら精神崩壊してもおかしくないはずだが、岡本にはそれは無いように見える。
虎太郎を連れてくれば良かったと後悔しだした時、前を歩いていた岡本が振り返った。
「今年はここなんだ…」
それは今は使われてない古い講堂だった。
「ここ?」
「雰囲気がいいだろ?
ホラーハウスみたいだから、意外と客も来るんだよ。」
俺の腕にしがみつく忍の手に力が加わったのがわかった。
「忍怖いの?待っててもいいぜ?すぐ戻って来るし…」
「…ここで待つより右京と一緒に居る方が安心かも…」
「無理すんなよ?」
とりあえず岡本に促されるまま建物に入った。
中は意外と綺麗だった。
20m程の廊下の壁には気味の悪い絵画が飾られていた。
「この絵は誰が?」
「部員で絵が得意な子がいてね…
頼んで描いてもらったんだ。
色使いが綺麗だろ?」
色使いって言ってもほぼ黒じゃねーかとツッコミたいのを我慢して「そうですね」と答えた。
「この部屋にある物は儀式で使う物ばかりだ。
…たぶん君も気に入ると思うよ?」
そう言ってとある扉を軋ませながら開いた。
その部屋に展示されているものを一言で言えば“悪趣味”という言葉が的確だろう。
…“乾燥コウモリ”なんて何に使うんだ?
近くにあったビンのラベルを見ながらそんな事を思っていると岡本は俺を呼んだ。