とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


隣の忍は声も出さずにただ俺の服の裾を握り締めていた。

青白い生気のない顔で生き生きと話す岡本に怯えているようにも見えた。


俺は安心させるように忍の肩を抱きながら岡本を見つめ続けた。


「で…その“偉大な悪魔”とやらはどんな姿でした?」

「実体化したのは見たことないが、素晴らしい知恵と知識を与えてくれたよ。」


実体化したのを見たことないだって?

…おかしい。

…儀式によって呼び寄せたのなら何故姿が見えない?


岡本は「選ばれた」と言った。

…儀式で呼び寄せたんじゃないのか?

だとしたら悪魔崇拝の思念だけで呼び寄せたって事か…


「なるほど…

素晴らしい知恵と知識…か…」


恐らく憑依しているのは悪魔じゃない。



俺は微かに風を纏いほんの少し力を解放した…



「…!!…うっ…」


突然頭を抱える岡本に俺は眼力でプレッシャーを与えた。


「…痛い…あっ…頭が…」

『出て来い…愚かな精霊…』


俺が低い声でそう言うと忍が俺を驚いて見上げた。


『大丈夫だ。悪魔じゃない。』


岡本は苦しそうにもがいて両膝を床に付いて頭を抑えた。


「あああああぁぁ!!!!」



絶叫と共に気を失って倒れた岡本から黒い霧のようなモヤが出た。



ー-ナゼ判ッタノダ…


『姑息な真似すんな…
悪魔にも値しない精霊が…』


ー-オマエハ、何者ナンダ…


『貴様に名乗る必要もない。

誰の命令で憑依した…』


ー-我ハ“ナベロス”様ノ使イ…



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