とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
『お前は風の精霊“シルフ”の一人だろ?
悪魔に肩入れするのか…』
ー-我ハ自由ナ精霊…
誰ニ従ウモ自由…
…ダガ存在ヲ消サレルノハ、ゴメンダ…
俺の力に気付いたシルフは逃げる様に消えた。
…精霊は捨て駒って事か…
「悪魔じゃなくて良かった…」
「…あれが精霊?」
「ん。風のな…おかしいと思ったんだ。
姿が見えないし、憑依されてるのに意外と平気そうだし…」
基本的に精霊は気まぐれが多いと聞く。
アスタロトの指示に従ったのも気まぐれだろう。
「実際精霊に会ったのは初めてだけど、めったに姿は見せないらしいからな。」
そう忍に説明すると安堵したみたいだった。
「幽霊じゃなくて良かったな。」
「べっ…別にそんな事…」
「ごめんな…怖い思いさせて…」
忍の細い体を抱き寄せて背中をさすりながら謝る俺に「大丈夫」と短く答えた。
俺は忍の頭を一撫でして気を失った岡本の傍らにしゃがみ込んだ。
さて…この男をどーするべきか…
「放置しとくのも良心が痛むが…」
「放置!?何言ってんのよ!
美鈴を呼ぶから待って。」
携帯を取り出し何やら短い会話をして電話を切ると、数分で美鈴が部屋に飛び込んで来た。