とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「岡本先輩!」
心配そうに駆け寄る美鈴に忍は「部屋に入った途端に倒れた」と適当に説明した。
「前にも倒れたのよ…
研究熱心だからきっと無理してたのね…」
「やつれてたし、しばらく休ませてやるといい。」
そう言うと岡本を俺は担ぎ上げた。
「どこに運ぶ?」
「隣の仮眠室に…ごめんね…運んで貰っちゃって…」
「構わないさ。…つか軽いな…お前なんか食わせてやれ!」
美鈴を真っ直ぐ見て「コイツの事好きなんだろ?」と聞くと真っ赤になった。
真夏のフォカロルの一件以来、会うのは久々だが美鈴は別人のようだった。
これが本来の彼女なのだろう。
忍への妬みの念も消えた美鈴は、至って普通の恋する女の子といった感じだった。
「ちゃんと看病してやれよ。
悪魔なんかよりお前の方がコイツには必要みたいだし。」
そう言うと美鈴は恥ずかしそうに笑った。
「…お大事にね?気が付いたら病院行った方がいいかもよ?」
「ありがとう、忍…彼氏さんも…」
忍は美鈴からの「ありがとう」に一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに満面の笑みで応えた。
部屋を出て気味の悪い廊下を歩きながら忍は満足そうに微笑んだ。
「美鈴が…ありがとうって言ってくれた…」
「本当は意外といいヤツなんじゃないか?」
「岡本先輩に美鈴の気持ちが伝わればいいなぁ…」
そう呟く忍に「そうだな」と俺も微笑んで建物を後にしたのだった。