とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「…で、その精霊は逃がしちゃったの?」
axelのカウンターに座って半眼で俺を見ながら虎太郎は不満そうに言った。
「逃げ足は早かったし、忍もいたしな…」
「え!?私のせい!?」
虎太郎の隣に座っていた忍は焦って「私は悪くない」と連呼していた。
「ホント俺がいないと二人ともグダグダだね…」
珍しく嫌みを言う虎太郎を凝視すると、それに気付いた虎太郎が片眉を上げた。
「…なに?」
「珍しく機嫌悪いな…」
「当たり前だろ!?
俺がシャスの事でどれだけ大変だったかわかる!?」
「「わからない」」
ハモる俺と忍を交互に見て虎太郎は涙目で“いかにしてシャスを説得したか”を語った。
話が長くなりそうだったので途中から聞いてなかったが、天界の天使連中にシャスの監視を頼むのにたらい回しされたらしい。
「でも監視役見つかったんだろ?」
「まぁそうなんだけど、“面倒なヤツを連れて来るな”と散々言われたよ…」
あの文化祭の後はしばらくフォカロルが監視役に回っていたが、3日目には「もう無理」と音を上げた。
その結果、週末の2日間(正確には金曜の放課後から)天界を飛び回っていたんだとか…
「それは大変だったな…」
「ご苦労様!」
「二人とも…物凄い“他人ごと”な言い方だよね…」
虎太郎は相変わらず機嫌の悪そうな顔のままカウンターに顎をついてうなだれた。