とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺達の会話をそばで聞いていたジンヤは「これ奢りますから元気出して下さい!」とドリンクを虎太郎の前に置いた。
「ジンヤ…お前意外といいヤツだな…」
「…“意外と”は余計ですよ…」
「それより、大学の学園祭は楽しめたの?
まだ後夜祭やってる時間じゃないの?」
そう…俺達はつい数時間前まで学園祭に居たのだが、後夜祭は断念してこうしてaxelに居るのだ。
「色々あってね…」
「なになに!?気になる!」
急に目を輝かせる虎太郎は、心底楽しそうな様子で身を乗り出した。
「ひとつ分かったのは、忍は大学でかなり人気があるって事。」
あの事件のあと、トイレに行ってる隙に忍は男子学生に声を掛けられていた。
どうしたのかと聞くと「後夜祭に誘われた」と答えた。
「当日でも誘われるって事は以前から誘われてたんじゃないか」と聞くと忍は歯切れの悪い返答をした。
「…それから散々右京の説教が始まって、しつこいから行くのやめたの。」
「失礼な!説教じゃない!…心配しただけじゃねーか…」
「同じようなもんよ!」
「…ハイハイ。ご馳走さまです…」
虎太郎は大根役者並みの棒読みで言った。
「んで、axelに様子見に寄ったら何故かシェイカー振ってた訳ね…」
「そう言う事。…でも早めに帰るぞ?
師範が迎えに来いって言ってたからな…」
「そうなの?最近おじいちゃん右京に甘え過ぎよね…」
「まぁ、いいって!
今のうち孝行しとかないと、死なれた時後味悪いからな…」
俺がそう言うと忍と虎太郎が「あの人はそう簡単には死なない!」と笑った。