とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
年の瀬
11月も半ば過ぎるとクリスマスシーズンに突入し、みんな浮き足立っていた。
俺はパスポートセンターを出ると駅までの道を一人歩く。
帰りに忍のバイト先に寄ろうかな…
そんな事をボンヤリ考えていると繁華街にさしかかった。
あまり人混みは好きじゃないが、この道が一番近道なので仕方ない。
時々知った顔とすれ違う。
axelの常連やらsevenのヤツやら色々だが、みんな俺を見ると同じ事を聞く。
「今日は忍さん一緒じゃないんですか?」
その質問に頷くと次はこう聞いて来る。
「ついに振られてしまいましたか?」
何故『一緒にいない』=『振られた』という図式が成り立つのかが不思議だ。
逆に考えると、忍もそう思われてたりするのだろうか…
俺は忍のバイト先に着くといつもの様に奥のテーブル席に座った。
「いらっしゃい。パスポートセンター混んでた?」
そう聞きながら俺の所に来た忍の顔をじっと見つめると、忍は眉を寄せた。
「…なによ…」
「ねぇ、忍。
繁華街を一人で歩いてたら知り合いにばったり遭遇したとするじゃん?
その相手に俺と別れたのかって聞かれた事ある?」
「はぁ?なにその限定されたシチュエーションは…
繁華街を一人でなんていつもだけど、誰も私なんて気にも留めないわよ。」
呆れたような顔をしながら、「ホットでいいわね?」と言って忍は下がった。