とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺はそんな忍の手を握り返す事しか出来なかった。
怖がる忍を安心させたいが、俺以外を嫌がる忍に愛しさが増すと同時に不安でたまらなくなる。
誰を忍につけてもきっと彼女は拒絶してしまうかもしれない。
「ったく…わがままだな…忍は…」
そっと抱き寄せると忍は俺の背中に手を回してぎゅっとブルゾンを握り締めた。
「どうしたら安心する?」
「…安心なんて出来ないよ…右京の側以外は…」
「…そうだな。俺もだよ。」
いつも忍の側にいて守ってやりたい。
誰かに託すのではなく俺の手で…
それが出来ないなら…
俺は忍の体を少しき離すと不安そうな表情の顔を覗き込んだ。
「忍。ひとつ提案があるんだけど聞いてくれるか?」
「…何?」
「俺以外の奴が安心出来ないなら、お前が守ればいいんじゃないか?」
「私が!?」
「そう。“自分の身は自分で守る”」
「なるほど!“護身術”ね?」
「ん。それ位なら俺にでも忍に教えられる。
でも一つ約束してくれ。」
「約束?」
「護身術は忍に教えるけど、完璧に自分の身を守れるわけじゃない。
もし、それでも自分の身に危険を感じたら、すぐに潤を呼べ。」
「…わかった。約束する。」
そう答えて力強く頷く忍の顔は凛々しく…
そして凄く綺麗だった。