とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
とりあえずバイクに乗れた師範は病院だというのに上機嫌で建物に入って行った。
ちょっと心配になって受付までついて行こうとした時、急に外が騒がしくなった。
そのすぐ後で救急車が到着し、ナースが数名慌ただしく対応していた。
「急患かな…」
そんな様子を横目で見ながら受付の師範を追いかけた。
「なんじゃ、騒がしいのぉ…」
「救急車が来てたけど、急患?」
俺は師範の隣で受付の女性に話し掛けた。
「え?…あ、はい。近くで気を失って倒れていたらしくて…
あの…付き添いの方ですか?」
「あぁ、このじじいの。」
「じじいとは何じゃ!」
「間違えた。この“クソじじい”の付き添いです。」
「やかましい!いらんわい!」
ちょっと頬を染めた受付の女性はクスクス笑いながら「内科の前でおまちください。」と言った。
プリプリ怒る師範を見送ってから帰ろうとした時、担架で運ばれて来た急患とすれ違った。
40代くらいの女性だった。
血色も良く外傷もなさそうだ。
担架でなければただ寝ているみたいだった。
俺はそれを見て少しホッとした。
他人とはいえ、やはり重症な人間を見るのは心苦しい。
「あ!…ヤバい今日は忙しいんだった…」
俺は停めてたバイクに乗ると急いで来た道を引き返した。