とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
家に帰るとダイニングテーブルの上に炒飯が用意されていて、忍の置き手紙があった。
「…“おじいちゃんがバイクに乗せて欲しいみたい…”ってここに書いてもおせーっつーの!」
ひとりで手紙にツッコミながら炒飯を平らげてジャージに着替えると道場に急いだ。
その日は最悪な事に清水さんが娘を連れてやって来た。
「右京君、約束通り連れて来たよ~」
「…俺、連れて来ないで下さいって言ったんですけど…」
半眼で清水さんを睨みながらうなだれると、後藤さんが肩に腕を回して「ご愁傷様」と呟いた。
「はじめまして!清水サキです!」
「はじめまして。師範代理の黒崎です。」
面倒くさいな…どーすっかな~
目の前でモジモジと上目使いで見てくる少女に頭を抱えながら考えた。
「あの…私、見学なんで気にしないで下さい。」
「何を言ってるんだ、サキ!
護身術くらい教えてもらえ!
…手取り足取りな!」
「清水さん、ちょっと黙ってて下さい。」
俺がそう言ってもニヤニヤ笑う清水さんにうんざりしたが、来てしまったものは仕方ない。
「ちょっと助っ人呼びます。」
「イケメンで頼むよ?」
勝手に連れて来たクセに注文の多いオッサンにイラッとしながら、俺は携帯で虎太郎を呼び出したのだった。