とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
潤に助っ人を頼もうかとも思ったが、結果として虎太郎で正解だった。
イケメンかどうかは別として、少女の相手としては適任だった。
「右京君、彼は何者なんだ!?
うちの娘は大丈夫かね…」
「何がですか?」
「だってあんなに密着して…」
「俺が指導したらスパルタになりますから、女には優しいし丁度いいじゃないですか…」
「そ…そうなのかい?」
「そうですよ。うちの門下じゃないですけど、師範もアイツには一目置いてるし…」
「清水さんいいじゃないですか!
彼だってかなりイケメンですよ?」
「確かにそうだが…」
どこか納得いかなそうな顔の清水さんに、後藤さんもそう言ってくれて大人しくなった。
「右京君、一つ貸しだぞ?」
「助かります。」
コッソリ笑う後藤さんに俺も微笑んだ。
恐らく今回で俺が稽古をするのは最後。
俺の腕を確かめたいと言い出した後藤さんに、さっきの件もあり手合わせをした。
門下の子供達と違い、さすが熟練者なだけあり意外と手ごわかった。
俊敏さはないものの力があり、一発がとてつもなく重かった。
ただ間合いの取り方や、返し方が師範に似ていてかわすのは簡単だった。
「さすが右京君だ!黒崎師範が留守を任せるだけあるなぁ」
「まだまだですよ。」
「いや、その若さでたいしたもんだ!
道場は継がないのかい?」
「まだ師範は現役なんで当分ないですよ」
「うちの息子も右京君の様に才能があればねぇ…
あんなクラブ通いなんて…何してんだか…」
「クラブ通い…」
なんとなく耳が痛い言葉だ。