とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
その日は朝から天気が悪く、朝から降っていた雨が夕方には雪になった。
いつもより帰りの遅い忍を心配していると、疲れたような表情でバイトから帰ってきた。
「おかえり。遅かったな。」
「...うん...もうこんな時間だったんだ...」
「どうした?具合でも悪いのか?」
俺がそう聞いても「悪くない」と答え、フラフラと自分の部屋に行ってしまった。
最初のうちは疲れてるのかと様子を見ていたが、明らかにおかしかった。
その後俺がバイトに行く時も、いつもなら見送りに来るのにそれもなかった。
玄関で靴を履こうとして、忍のブーツが揃えられていなかったのにも気付いた。
まるで“別人”みたいだ…
それが素直な感想だった。
axelまでバイクで行こうと思ったが、雪が降っていたため歩きにした。
「さむ!車がいいな…来年免許取ろう。」
そんな独り言を言いながらも忍の事が頭を離れない。
仕事中も淡々と業務をこなしながらも客と会話が成り立たないくらいだった。
「黒崎さん、どーしたんすか?」
「…え?」
「今日おかしいっすよ?」
「悪い…考え事してた。」
「珍しいっすね~」
ジンヤはマジマジと俺の顔を見ながら顎に手を当てて不思議そうに首を傾げた。