とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺はカウンターに背を向けて腕を組むとジンヤを横目で見た。
「仮に目的があって宿主を乗り換えてたら?」
「目的ってなんすか?」
「探してんだよ…誰かを。」
「誰かって…まさか!」
「狙いは俺かもしれない。
だとしたら…忍は恰好の宿主じゃないか。」
どうする?ヤツの罠にはまってやるか、忍から叩き出すか…
ジンヤは蒼白な顔になりながら、慌てて俺の腕を掴んだ。
「帰らなくていいんすか!?」
「多分大丈夫だ。…忍は大事な人質だからな。」
それに今までも無駄に人間を傷つけていない。
ヤツは頭がいい。
もし殺しでもしたら、今頃メディアで大きく取り上げられているだろう。
街の噂程度で済んでいるのがその証拠だ。
「なんか手はないんすか!?
俺手伝います!」
「…じゃあ一つだけ。
今日の“通り魔”の被害者に会いたい。」
まずはヤツが何者かを突き止めたかった。
ジンヤはすぐにゴウと連絡を取ろうとしたが、電話は繋がらなかった。
後で連絡すると言うと、ジンヤは帰れと俺をカウンター内から追い出した。
「いくら黒崎さんが大丈夫って言っても、俺が心配なんすよ!
俺だって忍さん、好きですから…」
そう言うジンヤに礼を言って俺は帰る事にした。