とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


フォカロルは俺の異変に瞬時に気付いた。

足元から風が微かに沸き起こり、次第に勢いを増した。

制御の利かない俺にフォカロルは小さく舌打ちをした。


「右京様!!…お許しを!」


そう言うと思いっきり俺の首を締め上げた。

片手で首を掴み徐々にその腕を上に持ち上げる。

下から鋭さを増した紺色の瞳が俺を睨んだ。

彼の長く尖った爪が首に食い込み、足が床を離れた時、痛さと苦しさで我に返った。


「ここで自暴自棄になっては相手の思うツボ。

忍様の身体から引きずり出しましょう。

…いいですか?」


俺が頷くとフォカロルは手を緩めて俺を放した。


「…すまない…助かった。」

「ワタクシにはこれくらいしか出来ませんから。
手荒なマネをしてすみません。」


さっきと同一人物とは思えないほど穏やかに微笑むと、フォカロルは闇に消えた。


「忍の身体から引きずり出す…か…」


イチかバチかやってみよう。

その前に…被害者だというゴウの知り合いに会っておきたかった。



< 378 / 405 >

この作品をシェア

pagetop