とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
フォカロルは俺の異変に瞬時に気付いた。
足元から風が微かに沸き起こり、次第に勢いを増した。
制御の利かない俺にフォカロルは小さく舌打ちをした。
「右京様!!…お許しを!」
そう言うと思いっきり俺の首を締め上げた。
片手で首を掴み徐々にその腕を上に持ち上げる。
下から鋭さを増した紺色の瞳が俺を睨んだ。
彼の長く尖った爪が首に食い込み、足が床を離れた時、痛さと苦しさで我に返った。
「ここで自暴自棄になっては相手の思うツボ。
忍様の身体から引きずり出しましょう。
…いいですか?」
俺が頷くとフォカロルは手を緩めて俺を放した。
「…すまない…助かった。」
「ワタクシにはこれくらいしか出来ませんから。
手荒なマネをしてすみません。」
さっきと同一人物とは思えないほど穏やかに微笑むと、フォカロルは闇に消えた。
「忍の身体から引きずり出す…か…」
イチかバチかやってみよう。
その前に…被害者だというゴウの知り合いに会っておきたかった。