とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺は忍の足を払うと床に押し倒した。
彼女は驚いて倒れたまま俺を見上げた。
俺は着ていた服を脱ぎ捨て上半身裸になるのを見て忍の顔をしたアスタロトは微笑んだ。
忍の体に馬乗りになるとそっと首筋を撫でた。
「…俺が欲しいか?」
「ええ…今すぐに…」
「残念だったな。」
「!?」
俺は忍の首を抑えると一気に力を解放した。
突風で部屋中の物が吹き飛ぶと同時に本来の姿に戻って行く。
「ひとつ教えてやろう。
俺はもう天使じゃない。
…“堕天使”だ」
そう言うと漆黒の羽根が舞い上がりゴツゴツとした翼が姿を現した。
だんだん引きつるアスタロトにニヤリと真っ赤なオッドアイを細めた。
「どうした、アスタロト。
俺が欲しいのだろう?」
「ひぃ!!…いや…」
大きく開けた忍の口から黒い何かが出て来るのが分かった。
同時に忍が気を失ったのを確認すると、首から手を離しその体を抱き寄せた。
「ごめんな…」
ここまでしないと引きずり出す事が出来なかった自分に腹が立った。
そっと抱き上げてベットに忍を寝かせると、四つん這いになって荒い息を繰り返すアスタロトに向き直った。
「アスタロト。覚悟は出来ているだろうな?」
「な…なによ!たかが人間の為に本気になるなんて!」
「人間だからここまでするんだ。
非力で弱い人間の為に俺は存在する。」
アスタロトは褐色の肌を晒し、ゆらりと立ち上がった。