とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺は窓辺を風の力で押し開けると、そこへアスタロトを眼力で突き飛ばした。
転がるように夜空に放り出され、悔しそうな真紅の目で俺を睨んだ。
俺は窓辺から飛び立つとアスタロトにゆっくり近づいた。
「お前はこの俺の力を利用しようとした。
それはルシファーの為か?」
「結果的にそうだけど、あなたは私達と共に在るべきなのよ。」
「ふ…人間なんかに肩入れしてちゃおかしいか…」
「天使でもない…その姿じゃ堕天使でもないわ!
ねぇ、一緒に行きましょう?」
「天使でも堕天使でもない…か…
だが、悪魔でもない。
お前と一緒にされると気分が悪い。」
それでもアスタロトは余裕の笑みを見せた。
「そういう言い方、嫌いじゃないわ…ゾクゾクしちゃう。」
「人間に手を出すな。犠牲者を出したら即刻タルタロスだ。」
「ふふ…そんなヘマしないわよ。
私を誰だと思ってるの?
大公爵アスタロトよ?甘く見ないで貰えるかしら。」
彼女は口元に手で隠すように上品に笑った。
「私は諦めない…絶対に!!
また会いに来るわ。
ベルゼに見つかったらうるさいのよ。
ふふ…ヤキモチかしら。」
アスタロトは「じゃあね、贖罪の天使さん」と言って投げキッスをすると、闇に溶けて行った。