とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
クリスマス
あれから“通り魔”の噂は聞かなくなり、代わりに人々は“クリスマス”という単語を頻繁に口にするようになった。
俺はと言うと…
「すっかり忘れてた…」
そう呟くのを聞いて学食のみんなが一斉に俺に冷たい視線を送った。
「…右京…サイテーだな」
「忍さんが可哀想過ぎるよ。」
「ただでさえ遠距離になるって言うのに…」
突然の集中攻撃を喰らい思わず動揺する。
「仕方ないだろ!?ここんとこ忙しかったんだよ!」
「そんな言い訳聞きたくない!」
まるで彼女のような台詞を吐く虎太郎にみんなが笑っていたが、俺はかなり焦った。
クリスマスイブまであと2日しかない…
「2日で何か出来る…」
「何かって何?ありきたりなプレゼントなら却下!」
「安心しろ。お前には絶対やらないから。」
「別にプレゼントにこだわる必要ないんじゃない?」
「そう言う寛二はどうすんの?」
「明日の夜からふたりで旅行~」
と言ってにんまり笑った。
「旅行か…それもいいな。」
「今からじゃ宿もいっぱいだろ。」
「だよな…」
「別にデートでもいいんじゃね?
綺麗な夜景でも見に行けよ。」
彼女のいない陸と虎太郎は面倒くさそうに言った。