とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
まだ早川は忍を諦めてないらしいが、こんなに冷たい言い方をされたら…
『ちょっとでいいんです!』
「すげー…めげてない…」
「無理!じゃあね!
右京、切っていいよ」
そう言われて通話終了ボタンを押した。
「忍。ちょっと冷た過ぎたんじゃないのか?」
「私があの子に迷惑してるの知ってたでしょ?あのくらい言わないと...
っていうか、あれで諦めたとは思えないけど...」
「お前、時々すげーな...」
「だって!今日は邪魔されたくないんだもん!」
「そんなに頑張らなくてもいつも通りでいいぜ?」
「ダメ!!」
急に声を荒げる忍に驚いて見つめると、忍は俯いて手を止めた。
「ダメなの。今日は...家族と...右京と過ごせる最後のクリスマスだから...」
その言葉に俺は固まってしまった。
忍は再び手を動かしながら話し続けた。
「私ね?プレゼント用意しなかったけど、右京の思い出に残るようにしたいの。
だから…今日は誰にも邪魔されたくない。」
「...忍...」
「ほら、右京もあっち行ってて!」
「忍。お前間違ってる。」
「え?」
俺は忍の粉だらけの手を掴んで流しの水道の蛇口を捻ると丁寧に洗った。