とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「俺は忍との事は何も忘れない。一分一秒たりとも全部。
今でも昔の事よく覚えてるよ。あの時忍がどんな顔してたとか、あの時どんな事言ってたとか全て。」
すっかり綺麗になった忍の手をタオルで拭き、両手で握り締めて正面から彼女の目を見て言った。
「今も全部記憶に残る。だから笑ってて欲しい。
怒ってても好きだけど、笑ってる忍が一番好きなんだ。」
「...私も右京の笑った顔...好き...」
俺はその言葉に微笑んでぎゅうっと忍を抱きしめた。
「一緒に作ろう?俺も手伝うからさ。」
「うん。ありがとう...」
そう小さい声で言うと忍は俺に「サラダを作って」と言った。
俺はレタスを千切りながら口を開いた。
「つーかさ!最後ってなに?俺が消えちまうみたいじゃんか!
縁起でもねー!」
「だって!しばらく会えないもの...」
「ちゃんと帰ってくるよ、忍の元に!」
俺は明るくそういうと忍は「そうだね」と笑顔を見せた。
それから小さく「ごめんね」と言って俺の頬にキスをした。
軽く触れるだけの一瞬のキスだけど、それすら俺は忘れないだろう。