とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



「俺は忍との事は何も忘れない。一分一秒たりとも全部。

今でも昔の事よく覚えてるよ。あの時忍がどんな顔してたとか、あの時どんな事言ってたとか全て。」


すっかり綺麗になった忍の手をタオルで拭き、両手で握り締めて正面から彼女の目を見て言った。


「今も全部記憶に残る。だから笑ってて欲しい。
怒ってても好きだけど、笑ってる忍が一番好きなんだ。」

「...私も右京の笑った顔...好き...」



俺はその言葉に微笑んでぎゅうっと忍を抱きしめた。


「一緒に作ろう?俺も手伝うからさ。」

「うん。ありがとう...」


そう小さい声で言うと忍は俺に「サラダを作って」と言った。

俺はレタスを千切りながら口を開いた。



「つーかさ!最後ってなに?俺が消えちまうみたいじゃんか!
縁起でもねー!」

「だって!しばらく会えないもの...」

「ちゃんと帰ってくるよ、忍の元に!」


俺は明るくそういうと忍は「そうだね」と笑顔を見せた。

それから小さく「ごめんね」と言って俺の頬にキスをした。



軽く触れるだけの一瞬のキスだけど、それすら俺は忘れないだろう。




< 392 / 405 >

この作品をシェア

pagetop