とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
虎太郎
道場に入っても怒声とともに師範は俺に容赦なく木刀を振り下ろす。
「のわ!!?」
身を低くしてかわしたが、師範の回し蹴りが顎にクリーンヒットして後ろに倒された。
更に師範は俺の腹を思いっきり踏みつけ、上から木刀を突き立てて来た。
思わず真下から風を巻き起こし、師範ごと吹き飛ばした。
「殺す気かぁ!?
つかなんでジジイのクセにそんな元気なんだよ!!」
肩で息をする師範を睨みつけた。
「やかましい!
この位でお前が死ぬわけなかろう!!
色魔天狗がぁ!」
「誰が色魔…」
そこまで言うと壁に寄りかかってるこっちを見ている人物に気付いた。
「…噂の生乱闘…
すげー迫力だな!」
と興奮気味の虎太郎が飛び跳ねるように駆け寄って来た。
「…虎太郎今の…見てたのか?」
俺の言葉にニヤリと笑う虎太郎。
「しっかりと見せて頂きましたよ?
…“ウリエル様”…」
そう呼ばれて跳ね上がる心拍数…
な、な、なんで…
「申し遅れました。
私は“力天使・ハニエル”
主の命により、ウリエル様の護衛をしております。」
そう言うと虎太郎は上品にお辞儀をしたのだった。