とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺と師範は、ただ固まって動けずにいた。
忍が入って来たのに気付いたのはしばらくしてからだった。
「護衛…?」
「あなたは主のお気に入りですからね~
人間に肩入れして堕天させられたのに、それでも堕天使として人間界に居続ける…
とても興味深いとおっしゃっていました。」
「…堕天なんて大した事ないさ。
というか、護衛なんて必要ない。
一応、元熾天使だ。人間より力は強い。」
「主が心配しているのは人間じゃありません。
…ルシファーですよ。」
その名前を聞いた途端、例えようのない怒りが沸き起こる。
「アイツ…まだ何かするつもりなのか…」
「わかりません。
ですが主は番人であるウリエル様を狙って来るはずだと…
完全に覚醒していないウリエル様の身を危惧しておいででした。」
なるほど…それで護衛か…
「…ルシファーってそんなに強いの?」
不意に聞こえた忍の声に振り返った。