とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「ハニエル」
「はい」
「我が身は少々問題があるようだ。」
「…問題とは?」
“俺”は虎太郎を真っ直ぐ見据えたまま、スゥー…と手を動かして頭を指差した。
「…“右京”がウルサい…」
「「「ぶっ!」」」
それを聞いた3人は吹き出した。
「ククク…それは大変ですね…」
「…笑い事ではないぞ。
“右京”と人格を統一しなければルシファーに対抗出来ない。
…少し時間がかかりそうだ。」
「ではそれまでこのハニエルが御守り致します。」
「うむ。
とりあえず今は“力”
の確認だけに留めよう。」
“俺”は右の手のひらを上に向けると小さな炎を出した。
おもむろにその炎を握り締めると拳が炎に包まれた。
「あ…熱くないの!?」
心配そうに見つめていた忍が声をかけた。
「…俺様を誰だと思っている…」
「ウリエル様は“炎の天使”です。
風を操るより容易い事なので心配いりませんよ!」
そう虎太郎が忍に言った。
腕に纏った炎は“俺”が見つめていると突然消えた。
「俺様が操るのは風と炎だけではない。」
フン!と鼻を鳴らすと“俺”は両手を合わせて息を吹きかけた。
ほんのり光だす合わせた両手は、そっと離すとゴルフボールほどの球体になった。
ほぉ~!と感嘆の声を漏らす師範。
球体はフワリと浮かび上がっ自由に動き回る。
「…」
“俺”はチラリと虎太郎を見た。
「へ?」
次の瞬間、球体はものすごくスピードで虎太郎目掛けて飛んで行った。