とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
『フン!都合のいい奴め…』
仁王立ちする“俺”を負けじと睨み返す忍が見える。
「ちょっと!右京!?」
ウリエルはスゥー…と腕を持ち上げ、開いたままの扉に手のひらをかざすと“パタンッ”閉じた。
驚いた忍が振り返って扉を見つめる。
「俺様は“右京”ではない。」
ウリエルは後ろから忍の長い髪に触れ、うなじが見えるように梳いた。
ピクリと忍が肩を震わせたのがわかった。
『…おい…何してんだよ…』
忍が驚いてこちらを見つめる。
俺の言葉を無視してウリエルは忍との距離を縮めていく…
警戒した目の忍が後退していく。
「…知りたいか?」
「…な…何…」
「“右京”が逃げた訳を知りたいか?」
「…いい…知りたくない!」
そう言って勢いよく俺の部屋から出て行った。
『てめーどういうつもりだ!』
「…俺様は神の使いだ。偽りを口にする事は出来ない。
貴様こそどういうつもりだ。
俺様の体を使って二度と偽りを口にするな。」
「!!」
反論出来なかった。
そしてこの体は、“俺のものであって俺のものでない”のだと思い知らされた。
黙り込んだ俺に『しばらくそこで反省していろ』とウリエルが溜め息混じりに言ったのが聞こえた。