とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



帰宅すると、とりあえず忍にメールを打つ。

しばらくすると返信ではなく着信音が鳴った。

『右京?
私だけど、今日ゼミでまだ大学なんだぁ~』

「そうなんだ。」


大学か…


「…なぁ、大学見に行ってもいい?

今日進路について担任に進学すすめられてさ~

あんま大学に興味が湧かなくて、少し見てみたいんだ。」

『なるほどね~
おっけ~♪
時間あったら案内してあげるね』


電話を切って私服に着替えると、バイクの鍵とサングラスを手に部屋を出た。

「あっぢ~」

強い日差しに思わず顔をしかめ、サングラスをかけた。


「師範に一応言っとくか…」


道場に入ると門下生と目が合った。

右京さ~ん!と元気に手を振って男の子が走って来た。


「おう!」

「あれ?稽古じゃないの~?
なんだ残念…
手合わせして貰おうと思ったのに…」

「出掛けるんだよ。
今日は夜稽古にするわ。
また今後な」


そう言い終わった時、師範がやって来た。


「なんじゃ、出掛けるのか?」

「忍の大学を見学しに行って来る。

進路迷ってんだよ…」

「勉強なんぞせんでも生きて行ける。

まぁお前の好きにするといい。

カラス天狗もおるし道を外れる事もなかろう。」
「師範…俺いずれはこの道場継ぐのも悪くないって思ってるぜ?」

「フン!ワシの目の黒い内は継がせんわい!」


どこか嬉しそうな師範に頬を緩めながら道場を後にした。

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