とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
秘め事
家に帰って来た時、まだ部屋は真っ暗だった。
「おじいちゃん、まだみたいね~」
「邪魔がいなくて良かった」
「またそんな事言って…
おじいちゃんが可哀想だよ~」
クスクスと笑う忍の手を引いて家に入る。
「私先にお風呂入るね~」
「…俺も一緒に入りたい…」
「だっ…ダメ!絶対ダメ!」
やっぱりダメか…
「チェッ…またお預け…」
シュン…と肩を落とす俺に真っ赤になった忍はちょっと背伸びをしてキスをすると、パタパタ走って行ってしまった。
「…コレで我慢しろって事か…」
珍しい忍からのキスがちょっと嬉しくて、ついニヤけてしまう。
「…形稽古でもしとくかな…」
鼻歌混じりに道場に行くと、そこの暑さに思わず顔をしかめた。
「クソあちぃーな…」
一つ一つ窓をあけ、やっとマシになったところで着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
木刀が風を切る音が響いた。
次第に噴き出す汗が背中を伝う。
「右京、まだ終わらないの?」
「もう少し。
…なに、寂しいの?」
「さっ寂しくなんかないもん!」
慌てて出て行く忍の背中を見てふぅ…と息を吐いた。
『…怖いのだな…』
「なにが?」
頭の中のウリエルの言葉に首を傾げた。
『先程の話のせいだろう。
俺様は寝ているから後で行ってやれ。』
そう呟くように言い残してまた静かになった。
「…後で行ってやれって…」
俺、何もしないで居れる自信ないんだけどな…
ガシガシと銀髪を掻きながら自宅に戻った。