とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
忍の枕元にしゃがんで頭まで被った布団を人差し指で少し下げると、潤んだ瞳が見えた。
「お前…怖いんだろ?」
「…怖くないもん…」
「……あっそすか……」
プイッと目を逸らすと立ち上がりドアに向かおうとした時、Tシャツの裾を掴まれた。
「…なんだよ…」
「ちっ…ちょっとだけ…怖い…」
恥ずかしそうに小さい声で言う忍にわざとらしく溜め息をついてみる。
「ったく…素直になれよ。」
そう言ってベッドに腰掛けて“ほら”と両腕を広げた。
おとなしく両腕にスッポリ収まって来た忍がたまらなく愛おしい。
ぎゅっと抱きしめて頬を寄せると耳元で囁いた。
「…正直言うと、忍の部屋来るの悩んだ。」
「…どうして?」
「一応俺、健全な男子高校生なんで…
好きな子と同じ部屋に居たら抱きたくなるだろ?」
「…そうだよね…」
「でも、忍の嫌がる事はしたくないから…
今は我慢する。」
「…あの時は止めてくれなかったのに?
なんか説得力ない…」
「あの時っていつの話?」
「…初めての時…」
「俺が中3の時の話だろ?
あの時はガキだったんだよ…反省してます…」
そう言うと忍はクスクス笑った。