とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
その朝、天気予報では雪マークだったのに忍は傘を忘れて学校に行った。
俺は少し悩んだが、学校帰りにそのまま忍の高校に向かった。
高校の正門前のレールに座って忍を待つ。
高校生がゾロゾロと下校し出して、しばらくすると忍の姿を見つけた。
隣に知らない男がベッタリ張り付いており、迷惑そうな表情の忍…
俺は無表情のままツカツカ歩いて2人の前に立つと驚いた顔で俺を見た。
「右京!迎えに来てくれたの?」
嬉しそうに走って来ると俺の傘に入り腕を絡めてた。
「困ってたの。彼氏のフリしてて」
そう耳打ちされ、ちょっとテンションが上がる。
何も言わずに忍に優しく微笑むと、男に鋭い視線を送ってから学校を後にした。
それから腕を組んだまま、くだらない話をしながら帰った。
家の近づくと俺の腕から放れてしまい急に寂しくなった。
「ありがとう!また彼氏のフリ、してくれる?」
…“彼氏のフリ”…
あくまでも“フリ”かと思うと何かムカついた。
「嫌だね」
そう言うと忍はシュンとなった。
俺が足を止めると振り返った忍に…
…初めてキスをした…
「“彼氏のフリ”は御免だよ」
そう言って忍に傘を握らせて雪の中さっさと先に歩いて帰った。
恥ずかしかったんだ…
女みたいにドキドキしちゃって、顔真っ赤だっただろうし…