とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


その朝、天気予報では雪マークだったのに忍は傘を忘れて学校に行った。

俺は少し悩んだが、学校帰りにそのまま忍の高校に向かった。


高校の正門前のレールに座って忍を待つ。

高校生がゾロゾロと下校し出して、しばらくすると忍の姿を見つけた。

隣に知らない男がベッタリ張り付いており、迷惑そうな表情の忍…

俺は無表情のままツカツカ歩いて2人の前に立つと驚いた顔で俺を見た。

「右京!迎えに来てくれたの?」


嬉しそうに走って来ると俺の傘に入り腕を絡めてた。


「困ってたの。彼氏のフリしてて」


そう耳打ちされ、ちょっとテンションが上がる。

何も言わずに忍に優しく微笑むと、男に鋭い視線を送ってから学校を後にした。


それから腕を組んだまま、くだらない話をしながら帰った。

家の近づくと俺の腕から放れてしまい急に寂しくなった。


「ありがとう!また彼氏のフリ、してくれる?」

…“彼氏のフリ”…

あくまでも“フリ”かと思うと何かムカついた。

「嫌だね」


そう言うと忍はシュンとなった。
俺が足を止めると振り返った忍に…



…初めてキスをした…



「“彼氏のフリ”は御免だよ」



そう言って忍に傘を握らせて雪の中さっさと先に歩いて帰った。



恥ずかしかったんだ…
女みたいにドキドキしちゃって、顔真っ赤だっただろうし…



< 85 / 405 >

この作品をシェア

pagetop