とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



驚いて見開かれた忍の瞳を真上から見下ろす。


「イノウエ、イノウエってうるせーんだよ!

俺の前で俺以外の名前連呼すんな!」

「…右京?…」

「好きだって言われた事ないから友達だって?

じゃあ、俺が忍を好きだって言ったら男としてみるのか!?」

「……」


次第に潤んでいく目を見て、自分が何をしたのかを理解した…


俺は忍から離れて座ると顔を両手で覆った。


「…腹が立ったんだ…

“弟”みたいにしか見て貰えない自分に…

いつでも忍の一番近くに居たかったんだ…」



忍はただ黙って俺の話を聞いてくれた。

ふと暖かい手のひらが頬を包んだ。
顔を上げると至近距離に愛おしい笑顔があって、ドキッとした。


「…右京?

私、右京の一番近くにいるよ?

…右京の事、弟だなんて思ってない…」


その言葉に俺に絡まっていた鎖が解けていく…


自由になった腕が忍を求めた…


自由になった唇が忍を求めた…


そして…


自由になった体が忍を求めたんだ…



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