とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
“神隠し”
煩く鳴く蝉の声で目が覚めた。
寝起きで上手く頭が働かない。
手を動かして忍を探すが空振りだった。
目を開けて部屋を見渡すとクローゼットの前に立つ忍を見つけた。
折り曲げた腕を枕にしてしばしその姿を見つめる。
パジャマを脱ぎ下着姿になった忍は洋服とにらめっこをしていた。
その様子があまりにも可愛くて自然と頬がゆるんだ。
「…右のワンピースの方がいい。」
急に聞こえた俺の声に驚いて振り返った忍は慌てて体を隠した。
「起きてるなら言ってよ!」
「いい眺めだったから、見とれた。」
「あっち向いてて!!」
「はぁ…わかったよ…」
忍に怒られて渋々背中を向けた。
もういいよと声がして起き上がると、ワンピース姿の忍が居た。
「可愛いよ、似合ってる。
…でも何か足りないな…」
「そぉ?」
鏡の前に立ち、うーんと唸る忍。
俺は近づいて忍をこちらに向かせた。
ひょいと抱き上げてると忍の鎖骨に吸い付いた。
「!?…ちょっと…なにすんのよ!」
ビックリして俺の肩を押し返した。
少し目線が高いところにある忍の顔にニッコリ笑う。
「これで完璧。」
「バッ…バカァ!!」
「うぉ!?…ちょっ…」
真っ赤になった忍が暴れて色んな物を投げつけて来たので慌てて退散した。