とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
顔を洗うと木刀片手に道場に向かう。
まだ早い時間にも関わらずかなり暑かった。
形稽古をしながら師範の存在を思い出した。
迎えに行かないと玄武さんに迷惑かかるよな…
仕方ないから後で迎え行ってやろうと思いながら、流れる汗を拭うと自宅に戻った。
軽くシャワーを浴びてから居間に行くと朝食を並べる忍が居た。
…機嫌悪いな…
「忍?」
「なに?」
「なんで怒ってる。」
「…跡つけられた…」
「キスマークの事?」
「明後日セリとプール行くのに…」
「…プールだと?」
思わず箸を落としそうになる。
「誰セリって!」
「昨日いたでしょ?
カフェテリアで会った子だよ。
その興味ない人の名前覚えない癖、直しなさいよ…」
「2人で行くのか!?」
ズイズイ身を乗り出す俺に、はぁ…と息を付いた忍は半眼で見つめた。
「右京。し つ こ い 。」
ガーンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
だがここで引き下がる訳にはいかない。
「ダメ!絶対ダメ!
…と言うよりヤダ!」
「なにがヤダなのよ!
プールくらいいいじゃない!」
「ダメ!
忍の裸を他のヤツらに見られるじゃんか!!」
「裸じゃないわよ!
水着着るに決まってんでしょ!?」
「同じようなもんだろ!?
どうしても行くって言うなら俺も行く!」
しばらく睨み合うと忍は溜め息をついた。
「…わかったわよ…
でも跡消えてからにするから。」
忍の返事にやっと胸をなで下ろしたのだった。