とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
怒った忍はかなり手強かった。
だが食い下がった甲斐があった。
あのまま押し切られて女2人でプールなんて、男に狙って下さいと言ってる様なものだ。
ふぅ…と安堵の息を吐いた時、ポケットの携帯が鳴った。
着信画面に“虎太郎”と表示されている。
『よぉ!今日暇か?』
「あぁ…これから師範を迎えに行くけど、午後は暇だぜ」
『迎えってこんな早くから師範出かけてるのか?』
「つーか昨日飲み過ぎで帰って来なかったんだよ…」
『…ウマウマじゃねーか!!』
「…それが先に寝られてさ~
まさに“蛇の生殺し”だよ…」
虎太郎は爆笑しながら「忍さんらしい」と言った。
後で会う約束をして電話を切ると、バイクで玄武師範代の家に出掛けた。
玄武師範代は元々“黒崎古武道場”の師範代だったが、丁度俺が中学に上がる時独立して傘下になった。
俺が最初に指導を受けたのも玄武師範代からだった。
厳しいながらも古武道の楽しさを教えて貰ったんだっけ。
玄武師範代の古武道場に着くと、玄関をガラガラと開けて「こんにちはー」と声をかけた。
家の中から優しそうな女性が顔を出し、俺を見るなり満面の笑みになった。