I LOVE YOU
私はさっき来た道を戻り、キッチンへ入る。お茶の準備をしている途中で人の動いた気配を感じなかった私は、確認のために玄関を見れば、佑介はまだ同じ場所に立ち続けていた。
ゆっくり佑介に近寄ると、彼は下を向いていた。私はしゃがんで佑介の表情を見てみる。
痛い顔をしていた。眉間に皺を寄せて、今にも泣き出しそうだった。
「…どうしたの?」
迷子になって泣き出す子供を宥めるように私は聞いた。それから少し間があいてから、ごめん、と蚊の鳴くような声が聞こえた。
「美奈子が妊娠した」
それを聞いても私の心は焦らなかった。逆に冷静に受け止めている自分がいて、もう、佑介に対して感情なんて無いことを知る。
「学校は?これからどうするつもりなの?」
一番聞きたかったことを質問してみる。
「俺は辞めて働くよ。美奈子も辞める。両親にはもう話して理解してもらったから、俺が18になったら籍入れるつもり…」
私は、そっか、としか言えなかった。
「…それじゃあ、もう、終わりだね…」
「ごめん…」
謝らないでよ、と私が言えば佑介は首を横に振って、ごめん、ともう一度謝ってきた。
「こんなこと言っても、信じてもらえないかもしれないけど…、俺は瑞穂のこと本気で好きだった…」
佑介は私の顔から目を離さない。彼の言ったことは真実なんだと、確信できた。私も佑介を見つめたまま、ありがとう、と小さく笑った。