I LOVE YOU


私はさっき来た道を戻り、キッチンへ入る。お茶の準備をしている途中で人の動いた気配を感じなかった私は、確認のために玄関を見れば、佑介はまだ同じ場所に立ち続けていた。


ゆっくり佑介に近寄ると、彼は下を向いていた。私はしゃがんで佑介の表情を見てみる。


痛い顔をしていた。眉間に皺を寄せて、今にも泣き出しそうだった。


「…どうしたの?」


迷子になって泣き出す子供を宥めるように私は聞いた。それから少し間があいてから、ごめん、と蚊の鳴くような声が聞こえた。


「美奈子が妊娠した」


それを聞いても私の心は焦らなかった。逆に冷静に受け止めている自分がいて、もう、佑介に対して感情なんて無いことを知る。


「学校は?これからどうするつもりなの?」


一番聞きたかったことを質問してみる。


「俺は辞めて働くよ。美奈子も辞める。両親にはもう話して理解してもらったから、俺が18になったら籍入れるつもり…」


私は、そっか、としか言えなかった。


「…それじゃあ、もう、終わりだね…」


「ごめん…」


謝らないでよ、と私が言えば佑介は首を横に振って、ごめん、ともう一度謝ってきた。


「こんなこと言っても、信じてもらえないかもしれないけど…、俺は瑞穂のこと本気で好きだった…」


佑介は私の顔から目を離さない。彼の言ったことは真実なんだと、確信できた。私も佑介を見つめたまま、ありがとう、と小さく笑った。


< 41 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop