I LOVE YOU
「瑞穂は、」
「え?」
不思議な顔をする私を見て、佑介は困ったような表情になりながら言った。
「瑞穂は、今まで一度でも俺を本気で愛してくれた…?」
聞いた瞬間に頭を何か固い物でガツン、と殴られた気がした。私は何も答えられなくて、ただ黙って佑介を見つめることしかできなかった。
佑介は仕方なさそうに口で弧を描いてから、ごめんな、と謝ってきた。佑介が伸ばした手は、私の肩ぎりぎりまでくると、しばらく止まった後、手は上に上がって私の頭を撫でいった。
「じゃあな…」
一言呟いて佑介は家を出ていった。私は空っぽな頭でそれを見届けるだけ。追いかけることは無かった。
しばらくすると手に水が落ちてきた。水は止まらなくて、口に入るとしょっぱかった。ああ、涙だ、私はこの時はじめてそれが涙だと認識した。空っぽなままでも思い出すのは佑介のあの言葉だけ。
『今まで一度でも俺を本気で愛してくれた…?』
愛してたよ、ずっとずっと、あなたが大好きだった。どうして今まで気づかなかったのだろうか、こんなに想いが詰まっていたのに。どうして気づくのが今なのだろうか。