I LOVE YOU
奈々の言う通り、幼い頃の俺はかなりのビビリマンだった。特に心霊現象がダメで、怖い話や映画を観たりすると夜中に目が覚めて眠れなくなり、恐怖に刈られ兄ちゃんを起こすか、たまに泊まりに来る奈々を起こしていた。
俺は溜め息をついて奈々を見れば、奈々はまだ『奈々ちゃん…奈々ちゃん…』と、幼い俺のマネを続けていた。
「……もう勝手にしろよ…」
とりあえず眠いんだ、俺は。もう一緒に寝ようがどうでもいい。
俺は立ち上がって部屋の電気を消した。布団に入って携帯を開いてみると、土曜日の文字が目に入り、今日が休日でよかったと、本気で感謝した。
携帯を閉じて目を瞑る。部屋が一気に静まって今が夜なんだと、改めて気づいた。
「…薫、」
突然、奈々の声が聞こえて俺は、ん?と返した。
「お願いなんだけど、しばらくここに居ちゃダメかな…」
「…ここって、家?」
聞くと奈々は小さく、うん、と答えるだけだった。
「俺は構わないよ。ちょうど空き部屋もあるし、そこ使えばお前も仕事とか出来るだろうし…」
いいよ、と最後に言った。奈々は少し間を空けてから口を開いた。
「…あのね、私、仕事辞めたの。ごめんね…理由はもう少し待ってくれないかな…」
「辞めた…?本当かよ、それ…」
「うん…。でも、お金のことは気にしないで、自分の分は自分で出すから」
俺に頼み込む奈々はなんだか、すごく必死に見えた。そんな彼女の姿は初めて見た気がする。