I LOVE YOU


「私、彼から暴力を受けてたの…」


泣き止んで少し後、奈々は1人になりたいと言ってお昼になった今まで部屋に引きこもっていた。ようやく出てきたと思えば、彼女は開き口一番に言ったのだった。


「その人は佐野さんて言うんだけど、付き合い始めた頃は、そんなんでもなかったのよ…。優しくて、真面目で、私彼のこと尊敬してたの。


でも、ある時友達に合コンの人数合わせで来てくれ、って頼まれて…、しょうがなくOKしたの。その事は彼にバレなかったんだけど、私、耐えきれなくて本当のこと言ったのよ…そしたらおもいっきり打たれて…。でも自分が悪いから、しょうがないと思って我慢した…。


でもその日からおかしいのよ、彼の様子が…。何か気に入らないことがあると、すぐ暴力を振るうようになったの。彼の家に泊まりに行ったときも、買い物で少し家を空けてたら帰ったときにいきなり髪を掴まれてお風呂場まで連れていかれて、浴槽に何度も顔を入れられたわ…。


それから束縛も激しくなるし、暴力もエスカレートしていった…。私、もう我慢できなくて…、逃げてきたの…。この前泣いたのも、彼から連絡がきて怖くなったから…」


奈々は話しているときも、話終わった後も頭を抱えていた。テーブルの上には小さな水滴がぽつぽつと落ちていた。





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