I LOVE YOU
「親には…その事言ったのか?」
言葉を詰まらせながら聞くと、奈々は顔を横に振った。
「お父さん病気で入院していてお母さんも疲れてるの…、そんな時に迷惑なんか駆けられないわよ。だから、親は何も知らない…。勿論、仕事辞めたこともね…」
疲れきった顔で話す奈々に、俺は、そっか、と言うことしかできなかった。
「ごめん…、少し眠くなってきたから部屋に行っていいかな…」
そう言うと奈々は立ち上がり、猫背でふらふらと自室に戻って行った。俺は奈々がちゃんと部屋に入るまで見届けてから台所へと向かった。
カップにインスタントコーヒーを入れ、冷えた手を温めながらリビングに戻ると奈々が置き忘れた携帯電話が光っていた。どうやら着信のようだ。外側にあるディスプレイを見ると、そこには「佐野」の文字。
奈々の部屋を振り返ったが出てくる様子は無い。
(ごめん…!!)
俺は心の中で奈々に謝りながら携帯電話を開く。電話はまだ鳴り続けている。俺は震える親指で通話ボタンを押し耳にあてた。