強く生きろと、君は言った
 女王は瞬き、静かにたずねた。


「失敗か?」


「ハッ、今調ベテオリマス」


「シエリ……」


 精霊王の声は詩絵理の脳にまで突き刺さる。


 本来、空間水晶(プリズム)に刻まれた、宇宙プラズマの連続からなる思考回路に。


 開いた詩絵理の瞳は冷ややかだった。


 女王、とその唇が動いた。合成声音が硬質に響く。


「できればもっと、さわやかに目覚めさせてくれるか?」


 その口調は無機質で淡々としていた。


 白銀の髪を肩からおろし、詩絵理は己の依するところの主の前に立った。


 立った、といっても、異質な空間の中で女王の下方あたりに漂う形である。


 しかも、自らを使役する者に対して、礼もとらずにだ。


 精霊王、現マスターのフォリオ・テイラーは、その不敵な態度に笑った。




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