強く生きろと、君は言った
 空間にうがたれた『扉』へと姿を消した詩絵理。


 その場から、精霊ゼルは吐き捨てる。


「ヴぁるそノ鏡面体ノゴトキオマエニ、人間ノヨウナ名前ナド、相応シクモ、必要モナイ」


 女王はそのとき、静かなまなざしを『扉』の彼方へ向けていた。


「帰りなさい。必ず……シエリ」


 人間のような呼び名に、小人はもう一度眉をひそめた。


「おまえよりシエリは古株。気をつけなさい」


 女王フォリオ・テイラーの御もとに頭を垂れ、ゼルは退出した。


「いつものことだけれど……困ったこと」
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