【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
「っ…!当たり前、でしょ。離して。」



耳に掛かる息にぶるりと身震いをして返すと、ヤスの鼻で笑う声が聞こえた。



「しばらくしたらディナーが来るから、シャワーでも浴びたら?」



振り返ると、濁った漆黒がこちらを覗うように向いていた。



「それとも、今からイイコト、しちゃう?」



「………!いい!遠慮する!」



私のこの反応さえ、予想しきっていたと言わんばかりのヤスは、ニタリ、と笑うとポケットから煙草を取り出した。



その顔が無表情に見えて、一瞬、怯えた自分が腹立たしくて、私はバスルームへと駆け込んだ。
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