【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
バスルームから出て、奥の部屋のソファーに膝を抱えて座っていると、後からバスルームへ入ったヤスも出てくる。
ウィッグも外し、長い黒髪を艶やかに濡らしたヤスは、異様に色っぽい。
多分原宿のどこかで買ったであろうカーゴパンツと灰色のパーカーに様変わりしたヤスは、私より年上なんだな、と感じさせられた。
「何見てんの?そんなに構ってほしい?」
「ち…違っ!」
反論する時間さえ与えられぬまま、あっという間にヤスにソファーへ押し倒されてしまう。
そして、整いすぎた、感情の伝わらない綺麗な顔が、私へずい、と寄せられる。